はじめに
育児休業からの復帰は、人生の大きな転換期のひとつです。
子どもとの時間を大切にしながらも、再び社会に戻る緊張感やワクワク感が入り混じった特別な時期。
そんな中、復帰直前に多くの企業で行われるのが**「育休復帰前面談」**です。
これは、会社側とあなたが復帰後の働き方や業務内容についてすり合わせる、大切な機会。
ただし、準備不足のまま面談に臨むと、
- 伝えたいことを言い忘れた
- 会社の制度や最新状況を把握しないまま復帰してしまった
- 復帰後に「こんなはずじゃなかった」と後悔した
…ということになりかねません。
そこで本記事では、育休復帰前面談で聞かれること・質問例・答え方のコツ・働き方別のポイント・事前準備チェックリストを、実例を交えて徹底解説します。

1. 育休復帰前面談とは?
育休復帰前面談は、職場復帰前に上司や人事担当者と行う話し合いです。
主な目的は次の3つ。
- 復帰後の勤務条件や働き方の確認
- フルタイム、時短勤務、在宅勤務、フレックス制度などの希望を確認します。
- 業務内容や職場の最新情報の共有
- 育休中の部署異動、業務変更、新しいツール導入など。
- サポート体制や配慮事項のすり合わせ
- 子どもの急病対応や保育園行事、残業可否など。
面談は形式的なものに見えて、実は復帰後の働きやすさを大きく左右します。
2. 面談前にやるべき事前準備
2-1. 希望する働き方を明確にする
まずは、自分がどのような働き方を希望しているのかを整理します。
例:
- フルタイム勤務で復帰したい
- 保育園送迎のために時短勤務を利用したい
- 在宅勤務を週○日取り入れたい
- フレックス制度を使いたい
2-2. 家族との役割分担を確認
- 誰が送り迎えをするのか
- 急病時は誰が休むのか
- 長期休暇中の対応はどうするのか
2-3. 社内制度の確認
- 時短勤務の条件や延長制度
- 在宅勤務の可否
- 子の看護休暇や特別休暇の利用ルール
2-4. 優先順位を決める
全ての希望が通るとは限りません。譲れない条件と妥協できる条件を分けておきましょう。
3. 面談でよく聞かれる質問と答え方例
3-1. 復帰後の勤務時間について
質問例:
復帰後はどのような勤務時間を希望していますか?
答え方例(フルタイム):
フルタイムでの勤務を希望しています。保育園の延長保育を利用できるため、定時勤務が可能です。急な呼び出し時は家族と調整し対応します。
答え方例(時短):
保育園の送迎の関係で、当面は9:00〜16:00の時短勤務を希望します。状況が整えば○年○月からフルタイムに戻す予定です。
3-2. 働く場所(在宅勤務の可否)
質問例:
在宅勤務を希望しますか?
答え方例:
週2日の在宅勤務を希望します。育休前にも在宅での業務経験があり、オンライン会議やチャットツールを使った業務連携が可能です。
3-3. 業務内容や部署異動の希望
質問例:
担当業務や配属先について希望はありますか?
答え方例:
育休前と同様の業務を希望しますが、新しい部署やプロジェクトへの参加も前向きに検討します。
4. 働き方別の注意ポイント
育休復帰後の働き方は、大きく分けてフルタイム勤務・時短勤務・在宅勤務・フレックス勤務の4パターンがあります。
どの働き方を選ぶかによって、準備や交渉のポイントが変わります。
ここでは、それぞれのメリット・デメリット、面談時の答え方例、注意点を詳しく見ていきましょう。
4-1. フルタイム勤務
想定質問例
復帰後はフルタイムで勤務できますか?
勤務時間中の保育園送迎はどうしますか?
回答例
フルタイムでの勤務を希望しています。保育園の延長保育を利用できる体制が整っており、急な呼び出し時は夫や祖父母と連携して対応します。
メリット
- 給与・賞与が減額されず、キャリアを維持しやすい
- 長期的に昇進・評価に影響しにくい
- 周囲との業務時間の差がなく、業務分担がしやすい
注意点
- 保育園の延長保育や病児保育の手配が必要
- 子どもの体調不良時の緊急対応が必須
- 家族やサポート体制の負担が増える可能性
面談での交渉ポイント
- 「なぜフルタイムで問題ないのか」の根拠を具体的に(送迎体制・病気対応のバックアップなど)
- 突発的な休みや早退時の対応ルールを事前に確認
- 業務量や残業の見込みを聞いておく
4-2. 時短勤務
想定質問例
どのくらいの勤務時間を希望しますか?
いつまで時短勤務を利用する予定ですか?
回答例
当面は9:00〜16:00の6時間勤務を希望します。保育園の送迎時間に合わせるためで、○年○月を目安にフルタイムへ移行予定です。
メリット
- 子どもの送迎や家事の時間を確保しやすい
- 生活リズムを安定させやすい
- 心身の負担を軽減できる
注意点
- 給与・賞与が減額される可能性が高い
- 時短でも業務量が減らないケースがある
- 昇進や昇給に影響する場合がある
面談での交渉ポイント
- 勤務時間だけでなく「どの業務を優先的に行うか」も確認
- 業務の引き継ぎ方法やスケジュール調整ルールを事前に話す
- 将来的なフルタイム復帰の時期を明確にしておく
4-3. 在宅勤務(テレワーク)
想定質問例
在宅勤務を希望する理由は何ですか?
在宅で業務を行う際の課題は何でしょうか?
回答例
週2日の在宅勤務を希望します。育休前も同様の形態で問題なく業務を遂行できており、オンライン会議やチャットツールを使った業務連携が可能です。
メリット
- 通勤時間がゼロになり、時間的余裕が生まれる
- 子どもの急な体調不良時にも柔軟に対応しやすい
- 集中して作業できる環境を作りやすい
注意点
- 職種や業務内容によっては不可能な場合がある
- チームメンバーとのコミュニケーション不足の懸念
- セキュリティや情報管理の責任が増す
面談での交渉ポイント
- 在宅勤務での業務実績や具体的な作業内容を提示
- オンライン会議・チャットツールの使用環境を整備済みであることをアピール
- 出社日とのバランスやスケジュールルールを決めておく
4-4. フレックス勤務
想定質問例
コアタイムや勤務時間帯について希望はありますか?
業務上の支障はないと考えていますか?
回答例
フレックスタイム制度を利用し、10:00〜16:00をコアタイムとして勤務したいです。保育園送迎後の出社や、夕方の家庭時間確保に役立ちます。業務連携はコアタイム内で行います。
メリット
- 送迎や家庭の事情に合わせた柔軟な勤務が可能
- 通勤ラッシュを避けられる
- 集中できる時間帯に仕事ができる
注意点
- コアタイム中は必ず勤務が必要
- 業務によっては柔軟性が制限される
- 他メンバーとの連携を意識する必要がある
面談での交渉ポイント
- コアタイム内で業務が完結できることを説明
- 出退勤時間の希望とその理由を具体的に提示
- 他の勤務制度(在宅や時短)との併用可否を確認

5. 育児との両立についての考え(詳細版)
育休復帰面談では、多くの場合「仕事と育児をどう両立するか」を深掘りされます。
これは上司や人事が「どれくらい働けるのか」「急な休みはどれくらい発生しそうか」「業務への影響をどう考えているか」を知りたいからです。
ここでは、面談でよくある質問例と、その答え方のコツを具体的にまとめます。
5-1. よくある質問例
- 「育児と仕事をどう両立していく予定ですか?」
- 「子どもの体調不良や行事など、勤務に影響がある場合はどう対応しますか?」
- 「家事や育児の負担は、家族でどのように分担していますか?」
- 「両立にあたって不安や課題はありますか?」
5-2. 回答例(フルタイム勤務の場合)
保育園の送迎は朝を私、夕方を夫が担当しています。急な発熱時は、私・夫・祖父母で対応を分担する体制を整えています。行事や予防接種などのスケジュールも事前に共有し、勤務への影響が最小限になるように工夫します。
5-3. 回答例(時短勤務の場合)
保育園の送迎と夕方の家庭時間確保のため、当面は時短勤務を利用します。急な欠勤時は夫や実家に協力を依頼できる体制があります。業務の進行や納期への影響を避けるため、タスク管理を徹底します。
5-4. 両立をうまく伝えるポイント
- 「家庭優先」だけでなく「業務への影響を最小化する工夫」も同時に話す
- 事前準備やバックアップ体制を具体的に示す(誰が送迎するか、病児対応は誰ができるか)
- 協力者の存在を強調(パートナー・祖父母・シッターなど)
- 将来的な働き方の見通し(時短→フルタイムなど)を添えると安心感アップ
5-5. 誤解されないための言い回し例
- ❌「子どもが優先なので残業はできません」
→ ✅「基本的に定時退社を予定していますが、事前に分かっている残業や繁忙期対応は可能な範囲で調整します」 - ❌「熱が出たらすぐに帰らないといけません」
→ ✅「急な呼び出し時は私が対応しますが、夫や祖父母とも連携しており、業務への影響を減らす体制を整えています」 - ❌「まだ生活のリズムが安定していません」
→ ✅「現在の生活リズムは安定しており、保育園や家庭内の協力体制も整っています」
6. 職場への復帰に対する意欲
育休復帰面談では、これまでの経験や今後のキャリアに関する前向きな姿勢を示すことが重要です。
上司や人事は、あなたの「働く意欲」や「今後の貢献度」を確認したいと考えています。
単に「頑張ります」ではなく、具体的な業務や目標に触れることで説得力が増します。
回答例(フルタイム勤務)
復帰後は、これまでの担当業務を引き続き担当しつつ、業務効率化の改善提案なども行い、チームに貢献したいと考えています。育児との両立のため時間的な制約はありますが、その分、業務時間内の集中力を高め、成果でお返しできるよう努力します。
回答例(時短勤務)
時短勤務となりますが、その中でも業務の優先順位を明確にし、納期遵守や品質維持に努めます。育児で得たマルチタスク能力を活かし、限られた時間で最大限の成果を出せるよう取り組みます。
まとめ
育休復帰前面談は、あなたのこれからの働き方を左右する重要な場です。
事前準備をしっかり行い、自分の希望を具体的かつ現実的に伝えることで、復帰後のミスマッチを防げます。
「子育て中だから制限がある」のではなく、「子育て中だからこそ工夫できる働き方がある」と前向きに臨みましょう。